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鹿島の欠陥マンション問題19年 なぜ動き出したのか(3) 鹿島が調停を起こす。

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鹿島の調停申し立てに先立つ09年3月には、鹿島の代理人という弁護士から鹿島との直接交渉を禁じ、補修工事を速やかに終結させると通告する書面がマンション管理組合に届いた。鹿島の責任を求めるなら瑕疵を特定する義務は所有者側にあるので瑕疵を示せと求めていた。
 当時の理事長だった津村文雄氏の怒りは、今もおさまらない。
 「優良分譲マンションというので購入したのに、これが優良か。駐車場は故障続きで落下事故もある。コンクリートは落ちてくる。建設費を削減するための手抜き工事としか思えない。欠陥マンションを、契約どおりに戻せと求めているのに、弁護士の言い分はなんだ」。

鹿島は住民をクレーマー扱い

鹿島建設九州支店

 建設業界関係者によると、欠陥マンションに対し、住民側で関与した建築士が、補修工事の一環として、欠陥と関係のないキッチンやユニットバスを新品に交換するように求めたり、関係する業者を内装や下請けなどに指定する事例があり、ゼネコン側も補修工事が無事終わるために多少の要求には目をつぶって応じるケースがあるという。

 鹿島側の代理人弁護士は当初、同じようなケースとみていた節がある。鹿島が住民側を相手取って起こした調停で、鹿島からの委任状には、最初「(瑕疵補修工事迷惑に伴う)損害賠償請求事件」と記載されていたからだ。補修工事に関して住民側が迷惑行為をしているのでその損害賠償を鹿島が住民らに求めるという委任状である。
 また、引渡し直後から長年理事長を務めていた東和眞氏が、マンションを販売した新生住宅の永野宗重社長(当時)の娘婿だったことも、欠陥の責任の所在追及や交渉における不明朗さを生じさせたと指摘する意見がある。東氏は「コメントは差し控える」として、当時のことは黙して語らない。

 新生マンション花畑西の欠陥をめぐる要求は「迷惑行為」どころか、耐震強度というもっと大きな問題(判明するのは、2013年)を抱えていた。

 住民側は、調停に対応するため、弁護士への依頼を余儀なくされた。調停は、12年1月の第1回から1年余り続けられ、住民側では、弁護士が入れ替わったり、建築士も複数関与するなか、居住部分のスケルトン調査と補修工事の合意や、隈筋未施工などの瑕疵について主張したものの、鹿島の主張と平行線をたどった。

 鹿島側で補修工事を担当した人物が、住民側に接近して、「内部情報」を売り物にして、コンサル契約を持ちかけることも起きた。欠陥マンション問題を食い物にしようと群がったことも問題を複雑にした。

構造問題への疑問が転機に

 転機が訪れたのは、構造問題に疑問が生じたことがきっかけだった。
 そこで、住民の1人が2012年末ごろ、たまたま知り合いだった構造設計1級建築士の仲盛昭二氏に話したことがあった、その後仲盛氏が構造計算書などを見たところ、建築構造上不自然な事象が数多く発見された。
 この時点では、耐震強度が基準の何%あるかまでは判明しないが、構造上の欠陥を抱えていることが初めてクローズアップされた。調停の間、住民側には、弁護士と建築士が複数関与していたが、誰も突き止めることができなかった。
 仲盛氏は、「担当した弁護士は西日本でも建築に関してはよく研究・勉強した弁護士でしたが、取り巻きの建築士に利用され、足を引っ張られていた」と語る。
 管理組合から構造検証の正式な依頼を受けた仲盛氏が、検証に取り掛かると、耐震強度が35%という衝撃の結果が待っていた。

(つづく)
【山本 弘之】


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