学者は甘い
下記に(株)ジャパンエネルギーグループ(今後、J社と呼ぶ)の自己破産申請手続き中の記事を掲載している。その倒産の水面下で、A氏の家族一党が年末の年越しができるかどうかを、悩みに悩み抜いているケースをリポートしてみよう。
もう1年前になるか、1年半前になるか、A氏は颯爽と家族ぐるみで岡山に引っ越していった。友人たちは、「その話には裏があるぞ!!もう太陽光ビジネスは下り坂だ。やめておけ!!」と説得した。そのA氏が岡山に引っ越すきっかけとなったのが、J社からの誘いだった。
A氏は大学、大学院で都市設計、店舗プランナーの専門を学んだ。そして大手の不動産会社に就職した。そこで大がかりな都市開発のプロジェクトに参画した。そのため、実務経験については、誰と比べても遜色はない。そして独立し、会社を起こした。一方では、大学非常勤教授として(学とビジネスの橋渡し)のネットワークづくりに奔走してきた。周囲からは、人物面では高く評価されていた。
だが、学者肌にありがちな、仕事を取ってくる能力にはまったく欠けていた。誘われて、百道浜にある不動産再開発プロジェクトのチーフについた。プログラムの作成にあたっては有能さを発揮した。だが、この不動産企画には、買い手は次から次に現れるのだが、成約までには至らなかった。3年もまともな対価を得られなければ、A氏の懐も寂しくなる。家族にもひもじい思いをさせる寸前になっていた。振り返ると、「百道浜計画に2年程度で見切りをつけていれば」と悔やまれる。
いわく付きの会社
経済苦境寸前のときに、甘い囁きがあった。J社・石原誠一社長からのスカウトである。「我が社の幹部に登用したい。許されれば、経営トップにおさまっても結構である」との囁きであった。
A氏は乗り気になった。相談を受けた友人たちは、異口同音に「見ず知らずの君に会社を任せてもいいという甘言の裏には、何か魂胆があるに違いない」と警告を発した。だが彼らの助言に聞く耳を持たずに、石原氏の下、岡山へ家族ぐるみ引っ越したのである。経済苦であると冷静な判断が不能になる。
岡山へ移転する前も、移転後も、A氏の判断の根拠を取材した。「石原社長は携帯電話販売代理店を行っていたが、とんでもない販売数字を残した立身出世の人だ。儲けた資金で太陽光ビジネスに乗り出し、事業を拡大している。自分の腕を発揮できるところはあろうと信じて、オファーを引き受けた」と、頭から信じている。携帯電話販売代理店経営は嘘偽りのない経歴であるが、その前が問題なのである。
今回、J社の自己破産手続きを耳にして心配になり、A氏に電話した。
「大変なことになった。もう岡山にはいられない。家族ぐるみで福岡に帰って、休眠にしていた会社を使って再起する」という電話先の口ぶりからは、悲壮感が漂っていた。
「石原氏に関してはまだ信じているの?」と聞いたら「何ら疑いを持っていない」と返事があった。「今さら石原氏の過去の行状を知らせても意味がない」と判断して、「福岡で会いましょう」と伝えて電話を切った。
【青木 義彦】
太陽光発電システム販売・施工、(株)ジャパンエネルギーグループ破産手続申請準備中
破産手続申請準備中 負債総額 約28億4,000万円
同社は、12月15日、従業員を解雇し事業を停止。事後処理を宮﨑隆博弁護士(弁護士法人後楽総合法律事務所、岡山市北区南方1-4-14、電話:086-226-1919)に一任、破産手続申請の準備に入った。負債総額は約28億4,000万円。
同社は、2013年5月設立の太陽光発電システムの販売・施工業者。3.11以降の再生エネルギー需要の高まりから、将来性を見込み事業をスタートさせた。カーポートの上に太陽光パネルを設置する「ZEROPORT(ゼロポート)」などの自社製品が人気を博し、初年度となる14年5月期には売上高約11億1,500万円を計上していた。その後も、営業拠点を東京・大阪・福岡などの大都市圏に集中させ活動範囲を拡大。15年5月期は、メガソーラー設置用の土地情報提供サービスを通じ大型受注を得るなどし、売上高約52億800万円を計上した。
しかし、順調に思えた業容拡大の一方で、売上代金回収の長期化等から資金繰りは逼迫していた。支払遅延も表面化し、その動向に注目が集まっていたなか、今回の措置となった。(株)ジャパンエネルギーグループ
代 表:石原 誠一
所在地:岡山市北区野田2-11-17
設 立:2013年5月
資本金:6,000万円
売上高:(15/5)約52億800万円